あらすじ
2017年の小樽、居酒屋うみかもめ
北海道小樽の港近い古びた居酒屋“うみかもめ”は、夫に先立たれた幸子がひとり切り盛りする店。
初夏のある夜のこと、そこへ土本キヌがやってくる。自由奔放な未亡人。孫の直樹がこの町に転勤してきたので、観光を兼ねてひと月ほど訪れたのだという。今日は仕事終わりの孫とこの店で落ち合う約束をしているのだ。
店はほど近い市場で働く女たちの憩いの場。この夜も、彼女たちを中心にした他愛もない酒宴が広げられる。
いつしかキヌもうちとけだし、この店の“いつもの時間”を共にしている。
団子屋もと子の孫娘である和美が、うみかもめにやってくる。
すると、キヌの孫直樹も到着。
刻々と流れるこの町の毎日の中に、少しだけ新しい風が吹き始める。
市場にて
ここは小樽の台所。60年を超える歴史のこの市場は、町の活気と観光客の旅心を満たしている。うみかもめに通う女たちの店も立ち並び、いつしかキヌと直樹もここへ通うことが日常となってきた。
閉店間際、皆でまたうみかもめへ出向こうという話に。
市場の片隅には、観光客向けに、その歴史を伝える写真の飾られた待合スペースが設けられている。
そこで皆の準備を待つ直樹、キヌ達4人。
町をよく知る、古いお寺の妻珠代は、市場の歴史の話をし始める。いつしか団子屋もと子の話に。
彼女は戦時中、樺太にいて、小樽に引き揚げてきたこと。ほとんどの男性はシベリアに抑留されたことなどを伝え始める。
駅前のバーにて
直樹と和美が訪れたバーは、うみかもめの幸子の孫、賢治の経営するモルトバー。
小樽といえば海の町、金融の町、そして、昔からウィスキー。
2人の間は徐々に温まりつつある。そこへ果物屋の孫、ダイちゃんが、仕事終わりの一杯を傾けに訪れる。
賑わいを避けるように2人は外へ。